執筆者/T.M
はじめに
皆さん、アニメは好きですか?
昨今3DCGでアニメ調のセルシェーディングを採用する作品が増えておりますが、特にアニメCGでは「Pencil+」を使用している現場が多いようです。
「Pencil+」とはPSOFT様が販売されているプラグインで、プリレンダーでセルアニメ風のルックを手軽に表現できる、非常に強力なツールです。
Pencil+ 4 for Maya 公式ページ https://www.psoft.co.jp/jp/product/pencil/maya/
以下画像は私が短時間で設定したロボットデータですが、簡単に見た目をアニメ調に変更できます!
※Pencil+でのレンダリング例
ただ、現場でPencil+をどのように使用しているかをWeb上で紹介している記事が少なく、特に数年前に発売されたMAYA版(Pencil+4 for MAYA)は、まだ使用例が少ないようです。そこで、弊社での使用例を少し公開させていただきたいと思います。
今回は、Pencil+自体を触ったことがないMAYAユーザーの方、もしくは3dsMAX版は使用したことがあるが、MAYA版は触ったことがないという方向けに、初歩的なPencil+4 for MAYAの使い方をご紹介いたします。
この記事の内容
1. 基本的な使い方
2. 初歩的な注意点
3. マテリアル設定
4.まとめ
1.基本的な使い方
まずは基本的な使用方法をご紹介します。オブジェクトを用意したら、ハイパーシェードでpencilマテリアルを作成し、アサインしてください。
次にライン設定を行います。
メニューの「pencil+4」から「ラインウィンドウを開く」をクリック。
ウィンドウが開いたら「追加」を押してPencilラインを作成してください。
ラインを選択した状態でアトリビュートエディタを開きます。
「ラインセット」の項目の右下の「+」ボタンを押し、ラインセットを作成します。次に同じ段の「マテリアル」の「+」ボタンを押して、先程アサインしたPencilマテリアルを登録してください。
これでPencilのマテリアルとラインがレンダリングできるようになりました。
※レンダリング結果
基本的な使い方は以上です。
2.初歩的な注意点
大まかな使用方法は1で書いた通りですが、その際に、いくつか注意点があります。
注意点①:Pencil+では、ラインセットにオブジェクトかマテリアルを登録することでラインが出るようになりますが、弊社では基本的にマテリアル登録を採用しています。オブジェクトで登録すると、モデルを複製した時等に、オブジェクト名が変わってしまい、登録が外れてしまう為です。また、マテリアル登録の方が管理がしやすいという利点もあります。
※ちなみに、Pencil以外のマテリアルを登録することもできます。マテリアルは他の物を使用し、ラインだけPencilで出す、という使用方法も可能です。
注意点②:ラインサイズは「絶対」と「相対」を選択できますが、「絶対」を推奨しています。「相対」はレンダリングする画像サイズに応じてラインの太さを変えてくれるのですが、意図した太さになりにくい為、画像サイズを変えてもラインサイズが一定になる「絶対」を基本的に使用しています。
注意点③:Pencil+のレンダリングは「MAYAソフトウェア」で行います。ただ、デフォルトのままレンダリングすると、色がマテリアルやテクスチャでつけたのとは異なる色で表示されてしまいます。これはMAYAソフトウェアが「カラー管理 」に対応していない為なので、プリファレンスの「カラー管理を有効化 」のチェックを外してからレンダリングして下さい。
注意点④:ポリゴンを滑らかにする3番キー(スムーズメッシュプレビュー)も、カラー管理と同じく本来MAYAソフトウェアに対応していません。デフォルトだと3番キーをONにしても、OFFの状態でレンダリングされてしまいます。しかし、Pencil+はこちらに対応してくれており、メニューの「pencil+4」の「レンダリング設定」をクリックすれば、3番キーをONの状態でレンダリングできるようになります。
注意点は以上です。
3.マテリアル設定
最初の項目では、ひとまず単色のマテリアルを1つ作成しましたが、当然、大抵のモデルは複数の色が必要になるかと思います。
以前からPencil+が使用されている3ds MAXの場合は、ポリゴンのフェースにマテリアルをアサインし、色分けするのが一般的です。しかしMAYAにはマテリアルIDやマルチ/サブオブジェクトが無く、フェースアサインとの相性は良くありません。
その為、弊社ではMAYAでPencil+を使用する場合は、通常のCGモデルと同じく、UV展開を行い、色分けしたべた塗りのテクスチャを貼り付ける方法を採用しています。
実際の作業手順をご紹介します。
Pencilマテリアルのアトリビュートを開いたら、「グラデーション」のゾーン数を表現したい階調の数にします。「ノーマル色/影色」の2階調にしたいなら2つ、「ノーマル色/影色/2影色」等の3階調にしたいなら3つにし、ゾーンの位置を調整します。(右側が明るく、左側が暗い方の色になります。)
今回は「ノーマル色/影色」の2階調にしました。ここで「選択したカラー」を変更すればマテリアルの色が変わりますが、テクスチャを貼り付ける場合は関係ありませんので、そのままにしています。ゾーンそれぞれにテクスチャを貼りますので、今回は「ノーマル色」と「影色」の2枚のテクスチャを用意します。
テクスチャを作成したら、ゾーンそれぞれの「カラーマップ」に貼り付けます。
※アトリビュートの上の方にも「カラーマップ」という項目がありますが、そちらとは別ですので注意してください。
これでレンダリングすると、明るい面はノーマル色テクスチャ、暗い面は影色テクスチャの色でレンダリングされるようになります。
ちなみに、Pencilマテリアルに貼り付けたテクスチャは、6キーを押してもビューポートに表示されません。一応テクスチャノードの「S」ボタンを押せばテクスチャカラーを表示させることはできますが、影がつかない為、少し見辛いです。
この対策として、弊社では別途lambertにノーマル色テクスチャを貼り付けた「プレビュー用マテリアル」と、それをアサインした状態のレンダーレイヤを用意し、アニメーション作業時にはプレビュー用、レンダリング時にはレンダリング用のレンダーレイヤに切り替えるようにしています。
マテリアルの設定は以上です。
まとめ
今回は以上になります。
テクスチャによる簡単なカラー設定まで記載いたしました。
全体としては下ごしらえが済んだ。といった状態です。
次回は、より良く見えるようなラインの設定方法について書かせていただきたいと思います。ご覧いただきありがとうございました。