執筆: M.T.
はじめに
久しぶりの執筆になります。ORENDA第二制作課のM.T.です。
今回はZBrushを使用した表現手法の1つを紹介しようと思います。
ZBrushで作られた作品の中には、どうやってスカルプトしたのか想像がつかないものも多いです。(案外そういった作品も標準的なブラシ機能だけで作られていたりするものですが……)
ここでは、機能を知らないと制作が難しい表現の1つである、粘度の高い液体表現について書いてみます。
言葉にするとかなりニッチな感じですが、クリーチャーを作っているとそれなりの頻度で作りたくなると思います。
ご紹介する知識が、皆様にとって新しいものであったり、創作のヒントとなり、どこかで役立ってもらえれば幸いです。
環境
ZBrush2021を使用し説明します。
作例紹介
例として、図1のような表現を目指してみます。
ZBrush のプリセットに含まれているカエルに、粘液のようなものを追加しました。
Dynamic Cloth紹介
メインで使用する機能である Dynamic Cloth の紹介です。
名前のとおり布の挙動をシミュレーションし、形状変更する機能です。
①Floor Collision……床の衝突判定です。キャラクターが空中に浮いている、みたいな設定でなければ基本onにします
②Set Direction……重力の方向設定です。布にランダムな方向性やシワをつけたいときに変更します。
③CollisionVolume……シミュレーション対象との衝突判定を計算します
④Inflate……コリジョン対象のメッシュに対して、コリジョンをどれほど大きくするかの値です※この作例では0.01に設定しました
粘液のベースを作る
粘液のベースとなるメッシュを作成します。
図3、4のようなメッシュを作成し、用意します。
図3
図4
手法としては、下記3つほどが提案できます。
①Photoshop上でテクスチャ作成→テクスチャをポリペイントに変換→ポリペイントからグループ作成→不要部分を削除
②ZBrush上でノイズ作成→ノイズをマスクに変換→マスクからポリグループ作成→不要部分を削除
③MAYA等のDCCツールを使用してplaneから作る
ツールへの慣れ等あるとは思いますが、最も複雑な形状を作れるのは①、速く作成できるのは②、簡単なのは③と思います。今回は②の手法で作成します。
図5
グループの境界はDeformation → Polish By Groupsで滑らかにしました。
図6
シミュレーションをかける
モデルを読み込みシミュレーションをかけます。
Dynamics → CollisonVolume → RunSimulation
Run Simulationを押して放置するのではなく、“イイ感じ”になった部分はマスクをかけて変形しないようにしたり、
重力方向を変えたりして、形状調整をしていきます。
※モデルのサイズが極端でシミュレーションがうまくかからない場合は、
Deformation → unify を実行しモデルのスケールを適切な状態にします
図7
Dynamic Subdivision で仕上げる
最後にDynamic Subdivisionを使用し厚みをつけます。
必要に応じてSmoothやPolishで形状を整えます。
これで完成です。おつかれさまでした。
図8
図9
まとめ
ZBrushの新機能を紹介してみました。
Dynamic Cloth の機能は工夫次第で表現の幅が大きく広がる、おもしろい機能だと思います。私もいろいろな設定値でシミュレーションをおこない、新しい形を作ってみたいと思いました。
今後も機会があれば、お役に立てるような情報を伝えていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。