執筆 T.M.

はじめに

前回、Pencil+4 for MAYAの基本的な使い方について、二回に渡って記事を書かせていただきましたT.Mと申します。

今回も引き続き、Pencilラインの詳しい調整方法をご紹介したいと思います。

下の画像は、ラインが出る箇所を細かく調整した後と調整する前のメカモデルの比較画像です。調整前は、装甲の角や継ぎ目に、ラインが入っていないのが分かるかと思います。

セル調のモデルは、ディティールにラインが入らないと形状が分かりにくいので、ラインをどこに出すか・どのように出すかが非常に重要になります。調整方法はいくつかあるのですが、弊社で主に使用している方法をご紹介させていただきます。

特定のエッジにラインを出す

まず、特定のエッジにラインが出るよう設定する方法をご紹介します。

例えばキャラクターの服のシワや、メカのパネルラインなど、手描きのアニメであれば、鉛筆でディティールに沿ったラインが入っているかと思います。しかし、ただPencilラインを割り当てただけだと、アウトラインやオブジェクトの境界線にしかラインが出ません。

任意のエッジにラインを描画するには、主に二通りの方法があります。

①ハードエッジを使用する

ラインセットのアトリビュートの「エッジ」→「スムージング境界」のチェックをONにした状態で、特定のエッジをハードエッジに設定すれば、その部分にPencilラインが出るようになります。

※デフォルトで既にチェックONになっています。

角ばった箇所や、エッジを立てたい部分にラインを出したい場合に有効です。

ただ注意点として、3キー(スムーズメッシュプレビュー)を使用すると、そのままではハードエッジが効かなくなり、ラインも出なくなってしまいます。

対処法としては、オブジェクトのアトリビュートの「スムーズメッシュ」の項目に入り、サブディビジョン方法の「グローバルを使用」のチェックを外し、下のプルダウンメニューから「Maya Catmull-Clark」を選択します。

さらに、「Maya Catmull-Clarkコントロール」の「エッジ硬度の伝播」をONにしてください。こちらで、3キーにしても、ハードエッジに設定したエッジにラインが出るようになります。

(※サブディビジョン方法に関しては、プリファレンスで初期設定を「Maya Catmull-Clark」にすることもできます。)

ただ、ラインが出るようになるだけで、エッジは立ちません。もしエッジを立てたい場合は、さらに「折り目」を入れましょう。

※MAX版Pencil+は「折り目」を入れた箇所にPencilラインが出ますが、、MAYA版では「折り目」を入れただけでは出ません。3キーの状態でエッジを立て、且つラインを出したい場合は、「ハードエッジ」と「折り目」の両方を入れる必要があります。

②選択エッジを使用する

任意のエッジにラインを出すには、「選択エッジ」機能を使用する方法もあります。

まずラインセットのアトリビュートの「エッジ」→「選択エッジ」のチェックをONにします。

※デフォルトで既にチェックONになっています。

ラインを出したい箇所のエッジを選択し、「作成」→「セット」→「セット」で選択セットを作成します。

作成した選択セットをクリックした状態で、「Pencil+4」→「選択エッジノードを追加」をクリック。

これで選択セットに登録したエッジに、Pencilラインが出るようになりました。

こちらはハードエッジと違い、スムーズをかけても消えることはありません。

注意点としては、選択セットを作りすぎると管理が大変になり、アウトライナも長くなってしまいますので、パーツごとや部位ごと等、ある程度まとめて選択セットを作成するようにしましょう。

特定の箇所に入り抜きを入れる方法

前回の記事で、ラインに入り抜き(強弱)を入れる「ストロークサイズ減衰」という機能をご紹介しました。

この機能は、自動で対象箇所全てに入り抜きをつけてくれる半面、入り抜きを入れる箇所や強弱を細かく指定することができません。そこで、他の機能を使い、より細かく入り抜きを入れる方法をご紹介します。

前回、特定のエッジにラインが出ないよう指定できる「サイズマップ」という機能をご紹介しました。察しの良い方ならお気づきかもしれませんが、こちらは白い部分はラインが出て、黒い部分はラインが消えるので、塗る色の濃さによって、ラインの消え方をコントロールすることができます。

下の画像は、サイズマップで三ヶ所の頂点をそれぞれ違う濃度で黒く塗ってみた結果です。

濃淡でエッジの消え方が違うのが分かるかと思います。こちらを利用すれば、エッジや頂点ごとに細かく入り抜きの入り方や入る箇所を指定することができます。

ただこの方法は、細かく入り抜きを制御できる半面、全ての箇所に濃淡を描き込む必要がありますので、少し手間がかかるというデメリットもあります。

※補足 

サイズマップを使用する場合は、アウトライン用とインライン用で、それぞれ別のマップを用意することを推奨します。

というのも、サイズマップで特定のエッジを消したり、濃淡を調整した場合、そのエッジが外郭になる位置から見た時、その部分だけアウトラインが消えたり、薄くなってしまうからです。

上記例の場合、赤マルのエッジが内側にある時は消えていてほしいのですが、外郭にある時もラインが消えてしまうと、やや違和感があります。その場合は、以下のような2枚のサイズマップを作成します。

インライン用のマップは通常の「ブラシ」項目の「サイズマップ」に、

アウトライン用は、「エッジ」→「アウトライン」の「個別のブラシ設定」のチェックをONにし、アウトラインの個別設定内の「サイズマップ」に貼り付けます。

すると下の画像のように、エッジがオブジェクトの内側にある場合はラインが消え、外郭になる時はラインが表示されるようになります。

その他のライン関連機能

 前回、ラインアトリビュートの「エッジ」項目の「アウトライン」から「選択エッジ」までの機能はご説明したのですが、一番下の二つの項目はあまり使用しない為、省略しておりました。今回はそちらの機能をご紹介いたします。

①法線角度

こちらは、エッジを挟んでいるフェース同士の角度が、指定した範囲になっているエッジにラインを出す、という機能です。デフォルトだと45度~180度になっていますので、ONにすると45度以上の角度がついているエッジにラインが出るようになります。

②ワイヤ

こちらの機能はシンプルで、ONにすると登録しているオブジェクトのエッジ全てにラインが出るようになります。つまりワイヤーフレームのレンダリングが可能になります。

まとめ

今回も、前回に引き続き、ラインの調整方法についてご紹介させていただきました。

Pencilラインを細かく設定・調整すれば、手描きのアニメやイラストのような、非常に魅力的な画作りが可能です。まだまだ多用な機能がありますので、また機会があればご紹介させていただきたいと思います。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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