執筆: S.G.

はじめに

株式会社ORENDAのS.G.と申します。ORENDAに入社して、もうすぐ1年になる新参者です。
以前はアニメ制作会社に務めていて、『撮影』という職種でテレビシリーズの2Dアニメの制作に関わっていました。ORENDAでも『撮影』として、CMやテレビシリーズのエンディングなどの短いアニメーション映像の制作に携わっております。
『撮影』というのは、もしかしたらあまり馴染みのない用語かもしれません。アニメ制作における『撮影』とは、キャラクターの画像(いわゆる『セル』)と背景の画像とを組み合わせて1つの画面を作る作業のことで、実写や3Dの業界ならば「コンポジター」と呼ばれる職掌に近いと思います。
業務で扱うのは主に Adobe After Effects(以下AE)です。
今回は、私が業務を行う上で使用することの多い、AEの機能を拡張するスクリプト、プラグインをご紹介したいと思います。いずれも用途がアニメ撮影に限定されないので、AEを使う機会のある方ならば少なからずお役に立つのではないかと思います。

プラグイン3選

Selected_Comps_Changer.jsx

http://www.crgreen.com/aescripts/

選択した複数のコンポジションの設定をまとめて変更するスクリプトです。
どんな分野であれAEを使っていくと自然とそうなるとは思うのですが、アニメ撮影のaepではめちゃめちゃコンポジションが入れ子になります。たとえば、画像素材を並べた「ステージ」(あるいはワークベンチ)としてのコンポジションがあり、その上にカメラワークをつけるコンポジションがあり、その上に画面動(画ブレ)を設定するコンポジションがあり、その上に色の調整やグレインなどのフィルターをかけるコンポジションがあって、その上が最終書き出しコンポジションになっていたりします。
作業の効率化・標準化のために行う多重コンポジション構成ですが、全体に関わる設定変更には脆弱です。具体的に言うと、制作した映像のデュレーションを伸ばす必要が生じたら、最終書き出しコンポジション以下、すべてのコンポジションのデュレーションの設定を変更することになります。
そんなときに力を発揮するのがSelected_Comps_Changer.jsxです。プロジェクトパネル上で複数のコンポジションを選択した後に実行すると、設定ダイアログが表示され、コンポジションの名前・縦横のピクセルサイズ・フレームレート・デュレーションなどを一括で変更することができます。

Un-PreCompose

https://aescripts.com/un-precompose/

アカウントを作成することでダウンロード可能です。その際Name Your Own Price なので無料プラグインではないですが、0円を指定することも出来ます。
機能は名前の通りプリコンポーズの逆、コンポジションの中身のレイヤーを外側のコンポジションに展開するものです。
一度行ったプリコンポーズを解除したくなった場合はもちろん、あるコンポジションで合成した状態を別のコンポジションの中で再現したい場合も使えます。

FX Console

https://www.videocopilot.net/blog/2018/05/fx-console-updated-to-v1-0-3/

Optical Flaresで有名な Video Copilot が配布しているユーティリティプラグインです。ショートカットキー(デフォルトではCtrl+Space。変更可能)を押すとマウスの先に検索窓が展開され、使用可能なエフェクトを検索することができます。

海外製のプラグインのため、日本語化されたAEや日本語入力とは相性が悪いところがあります。日本語名になったエフェクトの検索自体はできるのですが、検索窓内で入力・変換する際に文字が重複してしまう場合があるのです。
この問題は、お気に入り(Favorites)機能によってある程度解消できます。検索窓の歯車を押すと表示される設定画面で、あらかじめエフェクトを登録しておき、別名(Alias)を半角英数で設定しておくことで、日本語入力を介さずに検索をすることができます(上の画像では、「トーンカーブ」エフェクトに ”tonecurve”、「色かぶり補正」に ”tint”、「ブラー(ガウス)(レガシ)」に ”blur” の別名を設定しています)。

まとめ

以上、実際に業務で多用するAEの機能拡張のご紹介でした。
作業する環境を移動する時の手間を減らしたい、不具合が発生したときにその対応に時間を取られたくない、AE標準以外の操作手順を覚えるために頭を使いたくない……などの理由から、AEにスクリプトやプラグインを導入することに、私はあまり積極的ではないのですが、それでも新しく業務を始める前に必ず準備するのが、今回ご紹介した3つの機能拡張になります。
読んでいただいた方に多少なりとも有用な情報提供になっていれば幸いです。それでは!

関連リンク

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